最上級生が引退して代替わりしたオフシーズンは、バンドの編成を見直す大切な時期。
バンド編成は、コンクールの選曲にも影響します。
その引退した先輩達の穴を埋める為に、バンドの再編成で行われるのが「楽器変更」です。
そこで今回は、実際に息子も経験した「楽器変更」について書いていきます。
- 来年度のコンクール曲の選曲する為には、オフシーズン中にバンドの再編成が必要、楽器を変更されるメンバーがいる。
- 入部以来、愛着を持っていた楽器から楽器を変更されるのは、本人にとってはとても辛いこと。バンド仲間も決して他人事だと思わず、相手の気持ちになってその辛さを理解してあげる。
- バンドの為に楽器を変更してくれたメンバーに感謝し、そのメンバーをサポートすることが大切。仲間どうしお互いを思いやれるようになると、音にも変化が表れるので、コンクールなど大会を目指す前に、バンド内をひとつにまとめる。
学生時代からホルン一筋で楽器変更の経験がなかった私も、息子がチューバへの楽器変更を言われ悩んでいるのを見て、その辛さがわかりました。
吹奏楽部の楽器変更は本人にとって辛いこと
本人にとって、楽器変更は辛いことなのニャ。
経験がない人にはわからないかもしれないけれど、本人からすれば、楽器変更は辛いことです。
なぜなら、入部してから数年間吹いてきて、愛着も湧いた楽器を変えられてしまうからです。
例えば、クラリネットからバスクラリネット、アルトサックスからバリトンサックス、トロンボーンからバストロンボーンなど、同じ楽器の中で変わるのなら、それほどの違和感もなく受け入れられるのかもしれないけれど。
それでも、誇りや自身を持って吹いていた楽器から離れるのは、抵抗もありショックなはずです。
ましてや、トランペットからホルンやチューバ、木管から金管、または金管から木管など、まったく異なる楽器への変更は、本人からすれば、決してすんなり受け入れられるものではないでしょう。
いくらバンドの為とはいえ、そう簡単に個人の気持ちは追いかないもの。
今まで担当楽器を一生懸命に練習してきた子ほど、楽器の変更はとても辛いのです。
バンドの仲間はまず、一番にそれを理解してあげてほしいなと思います。
ユーフォニアムからチューバへ楽器を変更した息子の場合
楽器変更をした事がない私は、その辛さを体験した事はなかったけれど。
息子が自分と同じ吹奏楽の道を進むようになり、今回実際に先生から楽器を変更するように言われて、その辛さを実感した出来事がありました。
ユーフォニアムからチューバへの楽器変更
最高学年の6年生が引退して、息子が顧問の先生から言われたのは、ユーフォニアムからチューバへの楽器変更でした。
ユーフォニアムとチューバ、形は似ているけれど、同じ楽器ではありません。
マウスピースの大きさはもちろん、楽器の大きさや管の長さも違うので、アンブシュアも変わるし、息の使い方も変わります。
楽器変更は辛いだけでなく、変わったあとも大変なのです。
息子は入部当時ホルンを希望したものの、先生の「歌が上手いからと、ホルンよりも、メロディーの多いユーフォニアムの方が歌える」という言葉で、ユーフォニアムになりました。
最初はなかなか受け入れられずにいたものの、練習して成果が出るようになると、少しずつ楽器に愛着が湧き、ユーフォニアムを好きになれたようで。
「好きこそものの上手なれ」という言葉の通り、そこから息子の音が一気に変わったのです。
けれど6年生が引退し、いよいよ自分が最高学年になる目前にチューバへの楽器変更を言われ、息子は先生の言葉を、すんなりと受け入れることができませんでした。
コンクールの選曲前にバンドの編成を終わらせたいと思う先生の気持ちは、経験者としてもすごく理解できます。
そして先生が、ユーフォニアムを吹いている息子に、楽器を変わってほしいと思う理由も。
大体の楽器が1stから3rd、ホルンに至っては4thまでパートがある中で、ユーフォニアムだけが唯一1つのパートしかないからです。
息子が特別チューバに適していた訳ではなく、ユーフォニアムを吹いているのが息子だったから、他の楽器に比べて編成を崩しにくいからという理由でした。
けれど、部員全員がいる前で「ユーフォニアムなんて極めなくていいから、チューバをやるように」と先生から言われたら、子どもは萎縮して、何も言えなくなってしまうだろうなと思います。
さらには「じゃあ、他に誰が(チューバを)やるの?」と聞かれ、「僕は母と同じイチカシに行きたいので、できればユーフォニアム1本で高校まで続けたいです」と答えると、
「チューバはやりたくない。ユーフォニアムのままがいいなんて、自分のことしか考えないのは我儘だと思う」と言われ、息子は何も言えなくなってしまったそうです。
「先生の言う通りにチューバをやらない自分は、もう必要ないと思われているんじゃないか」、
「ユーフォニアムを続けたいなら、部活を辞めるしかないかもしれない」、
息子はだんだんと、そう悩むようになりました。
「部活を辞めてユーフォを吹けなくなっても、マイ楽器でレッスンに通えるようにしてくれる?」
先生から何回目かのチューバの話をされたある日、そう聞いてくる息子を見て、このままではいけないと危機感を感じました。
楽器変更を他人事だと思わず相手を思いやる気持ちが大切
さらに、そんな息子に対して「やる気がないなら辞めればいい」、「辞めたいなら辞めればいい」とバンド内の同学年の子達が言っていることを知りました。
同じバンド内の子が、自分の夢とバンドの編成との間で悩んでいるのに、これはないのでは。
その子達からすれば、息子の悩みなんて他人事のように感じたのかもしれないけれど。
もし息子がチューバを受け入れずに辞めたとしたら、自分もチューバへと楽器を変更されるかもしれないのに。
いくら編成の為とはいえ、好きな楽器から離れる辛さや大変さを理解しようとせず、仲間を切り捨てるような事を言う子ども達がいるバンドの為に、息子は楽器を変わらなければならないのかと。
吹奏楽経験者としても親としても、何とも言えない気持ちになりました。
吹奏楽はバンドなので、ひとりでは成り立ちません。
ひとりひとりの音の積み重ねで1つの曲が出来上がるので、バンド内で不仲の子がいたり、マイナスの感情を持った子がいると、それらはすべて音に表れます。
だからたとえ息子がチューバを引き受けても、先生や私から説得されて嫌々吹いているようでは何の意味もなく。
信頼できる先生と、周りを思いやれる仲間がひとつになって初めて、コンクールなどの同じ目標に向かって進むことができるのです。
先生と一部の子ども達の息子への言葉にショックを受けた私は、息子の為に、バンドの為に何ができるかを考え、動くことにしました。
いくら自分の子どもの事だとしても、本来、親が部活内のことに口を出すべきではないのはわかっています。
先生とも電話で話して、先生の考えや、バンドの為を思って熱心に動いている事も聞きました。
でもこのままだと、先生と息子の間も、バンドの仲間同士でもうまく収まるとは思えなかったし、今の状態では、コンクールを目指すのも難しいだろうなと思ったので。
それが正攻法とは言えないのは承知の上で、息子と同学年の子どもを持つお母さん達に、息子の今の状況を聞いてもらうことにしました。
息子は単に我儘で「楽器を変わりたくない」と思っているのではないこと、
(「イチカシに行くという夢がなければ、チューバに変わってもよかった」と思っていること)、
チューバを引き受けたら、「自分の夢を遠回りすることになる」と思っていること。
それでも先生から『バンドの為に』と言われてはっきり断る事ができず、「チューバを引き受けないのなら、部活を辞めるしかないと思っている」ことなど、息子が悩んでいる内容について、親子で考えてみてほしいとお願いしました。
その結果、お母さん達からは様々な返事をもらうことができました。
そのほとんどが、「チューバをやりたくないとは聞いていたものの、そこまで悩んでいるとは知らなかった」というものでした。
中には「子どもからは何も聞いていなかったので、今回打ち明けてくれてよかった」という声もありました。
家で話さないということは、その子にとっては完全に他人事だったのかなぁと淋しい気持ちになりましたが。。
でも今回のことが、バンドについて親子で考えるきっかけになったそうで。
「そこまできちんと将来を考えている子に、迂闊にチューバをやってほしいとは言えない」と思ってくれた子どもやお母さんに、「私がチューバをやってもいい」と言ってくれる子まで出てきました。
さらには「Iくんがユーフォニアムに残れるようにしてほしい」と、先生に直談判してくれた子ども達も。
夏のコンクールを目指す為には、チューバが必要不可欠だとバンド内で確認し合った上で、息子ひとりに押し付けるのではなく、みんなの中からチューバを決めることになりました。
来年度に最高学年となる子ども達で、ひとりずつチューバを吹いてみたそうです。
そうして、誰がチューバをやるのかをみんなで考えるようになっていくうちに、息子の気持ちにも変化が出てきました。
同学年の子達が自分のことを真剣に考えてくれたことで、もう自分も「ユーフォニアムだけ」とは言っていられない事はわかっていたようで。
昼休みなどの短い時間にも、チューバを試し吹きする女の子達を見て、「自分よりも体の小さい子が、ふらつきながら大きな楽器を持ち上げているのを見ても何も思わないなんて、俺は人として終わってるんじゃ…」と、心が痛んだそう(・_・;)
一度そう思ったら女の子達がチューバを吹く様子を見ていられなくなり、放課後の練習時に先生を準備室に呼んで「僕がチューバをやります」と宣言したようです(^_^;)
先生からも感謝と謝罪の両方の言葉をもらえたようで、音楽室に戻って先生から「Iくんがチューバを引き受けてくれました!」と報告されると、みんなが「ありがとう!」と拍手してくれたそうです。
それらを報告する息子の顔は、久しぶりに晴れやかでした。
私としても、誰かの説得ではなく、息子が自分の意思でチューバへの楽器変更を決めたことがうれしかったです。
なんだかんだで、息子がチューバをやることになるだろうなとは思っていました。
部内では数少ない男の子で、大きい音も出せるので。
ただ、説得されて嫌々やるのでは意味がないので、自分の意思で決心してほしかったので。
先生とTELで話した後に、叱咤激励の意味で、息子に少し毒づいていました。
みんなが自分のことのように考えて、チューバをやってもいいと言ってくれる子まで出てきたのに。
「いつまでもユーフォだけでなんて言ってたら、それこそ我儘なんじゃないかなぁ」、「だいたい華奢な女の子にチューバなんてやらせて、男として何とも思わないのかしら?」と。
なんだかんだ言っても、最後は息子がチューバをやることになるんだろうなとも思っていたので。
毒づいた分、「学生でユーフォとチューバを掛け持ちする子なんて、きっとそんなにいないよ! 両方の楽器を吹きこなせたら、すごくかっこいいよね!」と持ち上げてみたり。
ユーフォもホルンも(ひな段に上がらないから)たいてい木管の子達に埋もれて見つけにくいし、ユーフォなんて楽器を構えたら、顔がほとんど隠れて見えなくなっちゃうけど。
「それに比べたら、チューバはすぐに見つけられる席でいいね! お母さん、たくさん写真を撮るからね!」などと言ってみたり。
息子からは「新手の説得法ですか。先生に説得されるよりも、お母さんの方がなんか恐い。。」と恐れられていました(・_・;)
子ども達みんなで、バンドの為にどうしたら良いのか考えられたこと。
そして自分の意思で楽器変更を決めた息子を見て、「何かできることがあればサポートしたい」、「自分ももっと練習を頑張ろう!」と、子ども達がそれぞれに決意してくれたこと。
今回のことで、子ども達の気持ちがひとつになりました。
子どもにとっては、先生に意見を言ったり、自分の気持ちを伝えるのは難しいことだったりします。
面と向かっては言えなかった息子の思いを、親から先生に伝えたことで、ただ我儘で楽器変更を嫌がったのではないことなど、息子の気持ちも先生に伝えることができました。
それでも最後は自分の口で楽器変更を受け入れると伝えたので、先生にも、息子の意思や覚悟がしっかり伝わったと思っています。
信頼できる先生と、お互いを思いやれる仲間。
気持ちがひとつになると、良い意味で音にも必ず変化が表れるので、コンクールを目指す前に、バンド内がまとまってよかったと思っています。
もうすぐ出会うコンクール曲でどんな音を奏でてくれるのか、今から楽しみです。
まとめ
今回は、オフシーズンの吹奏楽部内でバンド再編成の為に行われる、「楽器変更」について書いてきました。
入部してから慣れ親しんだ楽器を離れるのは、変更する本人からすれば、とても辛いもの。
それでも「バンドの為に、みんなの為に」と気持ちを切り替えて、変更した楽器でコンクールを目指す日々が始まります。
だからこそバンドの仲間も、決して自分には関係ないとか、他人事だとは思わずに。
相手への思いやりを持って、慣れない楽器に奮闘するメンバーを、できる限りサポートしてあげてほしいなと思います。
その仲間を思いやる気持ちは、バンドの音作りに必ずプラスに作用するはずですよ(^_-)-☆
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